3 川柳・キャンパス点描

 

 

学食の若人我は異人らし

 

幼さがことばに残る佳人かな

 

ケイタイに応える微笑のやわらかさ

 

図書室に忘我の君の美しき

 

優しさを罪と知りてか花手折る

 

黒髪を染めたる金のくすみおり

 

胸高く匂う華にて二十歳よし

 

オーバーのスリット深く白き腿

 

冬の朝眉引く若き意志を見む

 

缶コーヒー教室に立つ咎め得ず

 

キーボード、ネイルアートに困惑し

 

ブーツにも尚余りあり若きすね

 

みどりなす髪にからまるタバコの香

 

母と娘の時を隔てて向き合いぬ

 

目を見張る美貌の人に説教す

 

ジョークよとスキャンしたのはセミヌード

 

黙礼も会釈もすでに死語らしき

 

満席のパソコンルーム気圧されぬ

 

静寂を破るケイタイ誰を呼ぶ

 

ラウンジの紫煙に揺らぐ乙女たち

 

未来と娘に名付けし人の夢偲ぶ

 

慰安婦のビデオに伸びる背筋かな

 

韓国の友と対座す脱皮の日

 

駆け寄りて読んだと本を示すなり

 

解き難く成人の日の髪で来ぬ

 

ハンドルで秘密書き込むNews Group

 

いつの間に蘇生す休学今は過去

 

巣立ちの日近くて羽の生えそろい

 

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華やぎの姿越えたる知の在処

 

父母の別れ見据えて静かなり

 

ひたむきなレポートなにが教師かな

 

過てりこの魂を「浮薄」とは

 

達筆とワープロ競う学期末

 

未生の子綴るペン字の痛みおり

 

さんざめく教室にあり女の香

 

教え子に教師なりせば教わりぬ

 

学生が女に変わる夕まぐれ

 

ケイタイの奥に賑わう巷聴く

 

あるだけの我を晒して語りきぬ

 

泣きながら夢に殉じて退学す

 

主役射て舞台踏む子に花贈る

 

キャリア積み高く空飛ぶ人の文

 

目覚めよと言われたくないシンデレラ

 

添削を返して笑みの戻りけり

 

無垢を脱ぎ裸足踏み出す子を見つめ

 

レストランファーストフードアルバイト

 

夜を行くレイプの恐怖脈打ちつ

 

車中にて痴漢捕まえ遅刻しぬ

 

たまさかに寄り来て笑みて語らいぬ

 

愛の名に値せずとも好きは好き

 

恐れなく二人で行きし旅語る

 

同棲に暗さも湿りも今は無し

 

教師には高嶺のバッグ持ちにけり

 

われ処女と誇らかに書く涼やかさ

 

初めての契り淡々報告す

 

黙約を交わし本音で討論す

 

我ら皆アジアの女と見交わしぬ

 

セックスということばにもたじろがず

 

結婚を見つめる瞳透視力

 

南北の格差学びて黙り込み

 

沈思してロールモデルは母と言う

 

さながらに球根畑試験場


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