「ロシアの学者および学術ジャーナリストによる、ウクライナとの戦争に反対する公開書簡」
この戦争には、理性的な正当性は一切ない。ドンバスにおける状況を今次展開された軍事作戦の端緒として利用しようとの試みは、まったく信用に値しない。ウクライナがわが国の安全保障にとっての脅威ではないことは、一目瞭然である。かの国を相手とする戦争は不公正なものであり、はっきり、無意味なものである。 ウクライナはわが国に近しかったし、近しくあり続けている。われらのうちの多くがウクライナに住む親戚、友人、そして学術的な仕事の同僚をもっている。われらの父や祖父や曽祖父はナチズムに対抗して共に戦った。戦争の勃発はロシア連邦指導部――疑わしい偏向した歴史的幻想によって動かされている―の地政学的野望によるものであり、父祖の記憶をシニカルに裏切るものだ。 われらはウクライナの国家保全を尊重する。それは現実に機能している民主的制度のもとで保持されてきている。われらはわが隣人のヨーロッパ寄りの選択を理解しつつ接している。われら両国間の関係におけるあらゆる問題が、平和的な道のりによって解決できるものであることを、われらは信じている。 戦争を起こすことで、ロシアは国際的孤立に立たされ、つまはじき者国家という状態に置かれることになった。このことは、われら学者が自身の仕事にいまや通常どおり従事できなくなってしまうことを意味する。学術研究を遂行するということはなべて、他国の同僚たちと文字通り協働するということを措いては考えられない。ロシアが世界から孤立してしまうということは、わが国が明るい見通しを全く欠いた状態の中で、文化的技術的にさらに衰退してしまうということだ。ウクライナとの戦争、これは何にもならない。 苦々しいことだがわれらは、ナチズムに対する勝利に決定的貢献をなしたわが国が、 今や、ヨーロッパ大陸における新たな戦争を引き起こした張本人となってしまったことを自覚している。われらはウクライナに向けられたあらゆる軍事行動を即刻停止するよう要求する。われらはウクライナ国家の主権と領土一体性を尊重するよう要求する。わが国のために、われらは平和を要求する。 2022年3月1日、東京・本郷の国際書院の石井彰さんからの情報提供です。 ロシアの科学者・科学ジャーナリストのロシア軍によるウクライナ侵攻に反対する「公開書簡」を九州大学の金山浩司先生が翻訳されたそうです。転送歓迎! |