東京・本郷界隈は年々変化するようでいて、変わらないものも多い。新旧共存の絶妙なバランスが保たれている。この街に通ってほぼ二十年。住人ではないから表面しかなぞっていないという自覚を持ちながら、訪問者の眼差しで見ると発見は尽きない。角を曲がるたび、思いがけないところに行き当たる。ここはワンダーランドだと思う。カメラ片手に通りから通りへ、私はいまだに街を歩き回っている。本郷一丁目を起点にすると、意外なところまで歩いていける。一葉ゆかりの「本郷菊坂路地めぐり」につないで、奥深い街の懐へ再び。この度は都会の緑を訪ねて歩く。

1. パノラマ

本郷通りから壱岐坂（大横丁通り）商店街を下って行くと、「東京ドームホテル」が正面にせり上がってくる。この丸みを帯びた平たい高層建築は、朝日を浴びてメタリックな輝きを見せるかと思えば、夕刻には最上階のあたりを取り巻く紫色のネオンベルトがソフトな光を放つ。壱岐坂は東洋学園大学本郷キャンパスを頂点にして新壱岐坂（壱岐坂通り）に合流し、そのまま下って白山通りにぶつかったところで目の前には「東京ドームシティ」が賑やかに広がる。ドームを中心に、遊園地のアトラクション施設がビジネス街の均衡を破る。とりわけ大観覧車"Big-O" が回り、ジェットコースターが蛇踊りのような曲線を描いて壁の穴から飛び出してくるLaQuaの一画は、カラフルな異空間である。

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