初出
朗読文化研究所通信 
「声にのせようことばと心」No. 12
2024年 9月 25日

喫茶古 03

「ちいさな朗読会」 IN 中軽井 No.3

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「小さな朗読会」IN中軽井沢 No.3 に参加して
朗読文化研究所イベント報告

北田敬子


新幹線の軽井沢からしなの鉄道に乗り換えて一駅、僅か4分で中軽井沢に着く。新しい駅舎の構内に図書館がある。その多目的室で今年も「小さな朗読会」は開催された。

幕開けでは室生朝子の『父犀星と軽井沢』から、芥川龍之介、堀辰雄、村松みね子らとの交流を描く日記が鈴江によって朗読された。会場は一気に大正末期の軽井沢にワープする。次いで新井の朗読による芥川の軽妙な『仙人』に、聴き手の緊張が緩んだ。小池真理子作「白い水着の女」(東朗読)には映画の一シーンを見るような楽しさがあった。第一部の最後では千武陵作、漢詩『勧酒』の井伏鱒二訳が倉片によって朗読され、「サヨナラ」だけが人生だ―という名句に一同が湧いた。

後半は倉片朗読の「きすげ」で始まり、軽井沢の植物に触れた。次に東が小池と呼応するように藤田宣永の「愛の神の棲むサロン」を朗読。縁談をめぐる母と息子との絶妙なやり取りが会場を沸かせた。次いで朗読劇『沓掛時次郎』(長谷川伸)を登壇者4人が熱演。ご当地の旧名の紹介とともに、任侠の人情噺が活き活きと蘇った。

最後に出席者全員で北原白秋の「落葉松」を一行ずつ二回朗読して会は締めくくられた。「か・ら・ま・つ」の発音はすーっと伸びたその木のように、という鈴江の指導が生かされた。中軽井沢で土地にゆかりの作家の言葉に触れるこの朗読会が、今後もしなやかに続いていくことを願わずにいられない豊かなひと時となったことをお伝えしたい。(敬称略)

NPO法人 朗読文化研究所機関紙「声にのせようことばと心」
2024年9月25日No.12
掲載原稿 

しなの鉄道中軽井沢駅

 
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