徒歩記 3

東京の水流
玉川上水を中心に

 

 

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■ 生活用水の流れ

ところで、東村山に来てから気づいたもう一つの水路がある。玉川上水、野火止用水が目に見える過去から未来に託された遺産だとすれば、現在実際に利用されている生活用水の流れである。それは直接目に見えるものではない。だが水路が確実に存在することを示すものがある。その東村山浄水場は、淀橋浄水所に代わって開設された東京への給水の要の一つである。ここへは小河内貯水池(奥多摩湖)、山口貯水池(狭山湖)、村山貯水池(多摩湖)からの水と、小作、羽村、調布の各取水堰から入る多摩川の水が流れ込む。また、利根川・荒川から水を集める朝霞浄水所と東村山浄水所は「延長約17km、直径約2.2mの『原水連絡管』で結ばれており、相互に原水を交換している」(東京都水道局発行「東京の水道」より)とのこと。水の流れが実感できるのは、武蔵境近辺から多摩湖まで一直線に伸びたサイクリング・遊歩道の存在である
東村山に移り住んで以来、この「境・多摩湖自転車歩行者遊歩道」は毎日のように歩く。目下護岸工事の真最中のため湖畔の狭山公園が十分に楽しめなくなっているのは残念だが、この道をどんどん西に向かって行くと広々とした湖水に出る。途中玉川上水のような水路こそ無いが、浄水所へ導かれる水が滝のように流れ落ちるところをちらりと覗き込むことは出来るので、この道の下を水道管が走っているのだなと想像はつく。地元の保育園、小学校の低学年の遠足はたいてい狭山公園、多摩湖だった。始めは上流への散策が主だったものの、移り住んだ時には三歳だった娘が高校生となり、この道は東に向かって武蔵野市にある高校までの自転車通学路にもなっている。驚いたことに、近隣の女性たちはこの道を自転車で吉祥寺まで買い物に行くという。電車を乗り継いで大荷物を抱えて歩くより、自転車の方が軽快だからと屈託無い。(私も一度真似してみたが、流石に片道1時間近くかかり、しかも吉祥寺駅周辺の駐輪スペースが限られているので以降断念している。)高校までの道は住宅地、畑の中を抜けていく。途中には公園や民家園などもあり、沿道の農家が野菜や果実の直販所を開いている。小金井界隈は特に桜の名所が多く、このサイクリング遊歩道沿いにも古木が豪奢な花のトンネルを造る。玉川上水とちょうど平行に走る箇所もあり、小平市はそれらをうまく結んで「グリーンロード」と呼ぶ。ここがウォーキングのメッカになるのもうなずける。

 

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