初出
朗読文化研究所通信 「声にのせようことばと心」No. 17 2025年 9月 25日 |
喫茶古 04 「ちいさな朗読会」 IN 中軽井 No.4 |
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「小さな朗読会」IN中軽井沢 No.4 に参加して 北田敬子 日本中で記録破りの猛暑が続く中、信州軽井沢は別天地と言えるほど清涼な風と光に満ちている。東京方面のみならず地元軽井沢からの参加者も得て、会場は満席となった。 プログラムの1部では、先ず大正時代に星野温泉で無銭飲食者が起こした「にせ赤い鳥事件」の顛末に始まり、芸術教育夏季講習会のあり様が語られた。『赤い鳥』の作品から鈴木三重吉による「ディモンとピシアス」の友情物語を倉片が、島崎藤村の「小さな土産話」三作を東が、そして芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を鈴江が朗読した。それぞれ味わい深くしかもスリリングな物語に聴衆の集中力が高まっていく前半となった。 2部では「昭和100年、戦後80年の想いで」というくくりで森瑤子の「嫁と姑」、君川みさ子の「姑と嫁」という愉快且つ背筋の寒くなる二作を荒井が、青春の記憶を描く小池真理子作「遠い思い出」少女IIIを倉片が、そして別れた父と娘の再会を(ノスタルジックなアメリカ映画「バグダッドカフェ」で流れていた)音楽を蘇らせる筆致で描く藤田宜永作「コーリング ユー」を東がそれぞれ情感豊かに朗読した。末尾を飾ったのは半世紀前に書かれた向田邦子作「ツルチック」「続ツルチック」。(朗読鈴江。)このエッセイの最後に登場する谷川俊太郎の名が第3部への橋渡しとなった。 3部は―谷川俊太郎の世界―(群読)という趣向で東、倉片、鈴江が「たいこ」・「かっぱ」・「みみをすます」など音として体に響く詩を次々に読み上げた。いずれも熟練の朗読者たちならではのパフォーマンスであり、谷川作「生きる」が恒例・参加者全員による一人一行ずつの群読となって会は大団円を迎えた。 当日、日本語の語彙・韻律・文化的背景を存分に味わうことが出来たのは大きな喜びだった。いずれ異文化からの参加者も交えてこの会がさらに発展していくよう心から願っている。(文中敬称略) NPO法人 朗読文化研究所機関紙「声にのせようことばと心」 |
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