徒歩記 3

東京の水流
玉川上水を中心に

 

 

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■ ライフライン

2005年夏、首都圏は局地豪雨に見舞われて河川が氾濫し、世田谷区・中野区などに床上浸水の被害をもたらした。コンクリートの地面は雨水を吸収せず、それが一気に中小河川に流れ込んだのが原因という。アメリカ南部メキシコ湾岸ミシシッピー川流域にハリケーン「カトリーナ」が甚大な被害を及ぼしたほんの数日後のことだった。いずれも、いつになっても人が水と協調して生きるのはたやすいことではないと痛感させられる出来事だった。


暴れ出すと怖いが、どんな過密な都市にも川が流れていればその一角には自然に開けた風通しの良い空間が生まれる。関東平野を横断していくと西から順に多摩川、荒川、中川、江戸川(上流では利根川)を越える。荒川は下流で隅田川となり、東京湾に注ぐ。どの川を渡る時にも私は思わず身を乗り出して車窓から河原を眺める習性が抜けない。都会から失われていく自然の姿がそこにはいつも息づいている。見える水路も見えない水路も、それが東京のライフラインであることに魅了されているからなのかもしれない。

*【玉川上水の保存】東京都の「玉川上水歴史環境保全地域指定」(1999年)。指定区域は、福生市の宮本橋から新宿区の四谷大木戸までの玉川上水のうち開渠部分。国の「玉川上水史跡指定」(2003年)。羽村取水口から四谷大木戸まで約43kmのうち、下流部の暗渠部分をのぞいた約30km。

(右の写真は 多摩川から玉川上水へ水を取り入れる「羽村の堰」)

初出 東洋学園発行「研究室だより」37, 2005

なお、本文で触れた玉川上水・野火止用水・本郷給水所公苑関連の写真は、「東京散歩」中、武蔵野点描「五月の光彩」再生の水辺「玉川上水」弥生の風 「多摩湖自転車歩行者遊歩道」武蔵野春のせせらぎ 「野火止用水緑道」神田川の両岸--駿河台と本郷 、 サクラ咲く川辺「玉川上水羽村の堰」と多摩川「多摩湖一周自転車道」 の中に収録されています。よろしければ併せてご覧下さい。

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