New Zealand紀行
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6 海へゆくもの K. Kitada (1) NZから日本への直行便に乗るには一旦Aucklandに戻らなくてはならない。NZ旅行の最後はAuckland観光と決めた。南島から北島へ空路国内便で移動し、繁華街にあるホテルに投宿。窓の外はビルばかりで、久々に都会の雑踏に放り込まれた。特に見物する場所は決めていなかったので、先ずは港の方角を目指して街に踏み出す。丸一日半、何を見つけられるか運試しだ。ただ、翌日はイースターホリデーで店舗は軒並み休業となることが予想されるため、朝食はあらかじめ準備しておくことを勧めるとエージェントから注意されていた。そういえばNZに来て以来、店頭には“Easter Sale”のポスターが張り巡らされ、ウサギ型チョコレートなど関連商品が山積みされていた。南半球ではクリスマスが夏、イースターは秋になるのかと改めて認識する。 港は明るく開けていた。入り組んだ埠頭には大きさも様々な色とりどりの船舶が係留されている。水辺を見晴らせるエリアには洒落たレストランやカフェがひしめき、大勢の人々が行き交う。その賑わいは、南島の景勝地の素朴さとは異なる刺激に満ちていた。フードトラックでサンドイッチと飲み物を買い、ベンチで頬張っていると日差しが強い。数日前にフィヨルドで震えていたのが嘘のようだ。まだ帰りたくない、何かNZならではのイベントはないものかと思っていたその時、目の前に“WHALE & DOLPHINE SAFARI”と書かれた船が停泊しているのに気付いた。なんと、Aucklandでもwhale watchingができるのか!私たち二人は飛び上がって早速チケット販売窓口を探しに行く。サインボードに従って進むと、NZ National Maritime Museum(国立海洋博物館)内に受付があった。船は一日一回午後2時30分に出発するという。6時帰港だから帰りの飛行機には十分間に合う。翌日分を即座に予約した。 その日は土産物を物色したり、イースターホリデーに備えてスーパーマーケットで食品を買い込んだり、ホテルでパッキングに勤しんだり半分は帰国準備に費やした。夜になってサファリのチケット購入時にもらった小冊子を丁寧に読んでみると「船酔いする可能性のある人は、乗船一時間前に酔い止めの薬を服用すること」と書いてある。よほど船は揺れるのだろうか。酔やすいとの自覚はないものの、そんな注意書きを読むと飲んでおいた方が良いのではないかという気になってくる。しかしスーパーも薬局も翌日のイースターホリデーには閉まっているのではなかろうか。思いがけない不安に襲われる。 NZでの最終日、朝起きてみると雨だった。これから海に出ようというのにどうなるのだろう。(どうせすぐ止むから大丈夫と娘は呑気だ。)心配性の私は酔い止め薬の購入にこだわっている。ホテルのフロントで相談すると、あっさり“This pharmacy is open.”と商店街の一角を示してくれた。流石に薬局は休みなしだった。果たして、薬は無事買えたし雨も止んで太陽が顔を出し始めた。「幸先良し!」と気を取り直し、埠頭へ。 出航前にまだ時間はたっぷりあったので私たちはランチの後、国立海洋博物館を見学することにした。今回のNZ旅行中、博物館・美術館の類に入ったのは、Mt. Cook山麓のホテルの一隅にあったSir Edmund Hillary Alpine Centerだけだったが、最後にこのような博物館に圧倒されることになろうとは思わなかった。14世紀にポリネシア海域から小型のカヌーや筏でNZにやって来た人々(含Maori族)の船や漁具、19世紀以降ブリテン島を中心とするヨーロッパ各地から移住してきた人々の大型船舶(の模型)や歴史的資料、そして現代のテクノロジーを集結して世界を驚愕させ続けるヨットチームの活躍ぶりなど、NZをNZたらしめている海洋民族国家の誇りが詳細に展示されていた。 |
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